第3話「門の向こう」

第3話「門の向こう」を読みました。摩緒と菜花と猫鬼の関係を「器」で示唆してます。また、最初の怪奇事件「首なし死体」の導入部となってます。

第3話「門の向こう」

器と傷

単純に予想すると「かつて摩緒は死にかけて猫鬼に乗っ取られた。そして1904年(大正4年)に猫鬼は菜花に乗り移った。猫鬼に器にされた菜花は2011年(平成23年)に戻され、猫鬼は毒(≒スムージー)で封じられ、菜花は人間として成長した」となります。摩緒のセリフ「あるいは菜花は…」から推察するに、摩緒はその可能性に気が付いているのでしょう。

今は…そういう事になるのかな

また、摩緒のセリフ「まあ…今は…そういう事になるのかな」から推察するに、摩緒が猫鬼に乗っ取られたのは大正よりもずっと昔のことであり、大正4年まで摩緒は人間としての意識がなかったと思われます。ここで「妖怪が顕在化している間、肉体は加齢しない」という仮説が成立します。

背中の傷は矢か爪か

ところで、摩緒は背後から矢を受けてます。状況的に複数本の矢はほぼ同時に射られたものと考えられます(さもなければ背後を警戒してるはずですので…)。しかるに、第2話によれば摩緒の背中の傷は猫鬼による「ひっかき傷だ」ったはずです。

1915年と1923年

あっちの世界が1923年(大正12年)5月であると判明しました。つまり、陥没事故のときに菜花が行ったのは1915年(大正4年)であると考えられます。

歴史的には第一次世界大戦中になります。青島を占領した大日本帝国が出した対華21ヶ条要求を中華民国が受け入れた頃(1915年5月9日)でしょうか。もし摩緒という名前が中国語の猫(マオ)を暗示しているとするなら、この青島占領が物語に関係してくるかも知れません。

そして、物語の舞台である1923年(大正12年)は日本がシベリアから撤兵した翌年でもあります。この年には、国際婦人デー記念集会、工場法改正、日本共産青年同盟設立、大阪天王寺駅開業、北一輝『日本改造法案大綱』、浅草寺で施無畏学園(少年保護施設)創設、日英同盟の解消(8月)、関東大震災(9月1日)、虎ノ門事件(12月27日)などがありました。関東大震災は物語の重大なポイントになるだろうと予想しています。余談ですが、関東大震災の後に伊集院忍と花村紅緒(22歳)が結婚します(『はいからさんが通る』)。

シベリア"

コマ中央の羊羹カステラはシベリア(siberia)です。明治後半に考案されたとされています。

第2話「摩緒」の感想で書いたように、大正時代で2日を過ごして令和時代に戻りその翌日に大正時代に行くと自分がいることになります。このパラドックスを生じさせない為には「翌日に大正時代に行けない」などの設定が必要になります。

首なし死体

物語における最初の怪奇事件です。ミルクホール店員である貂子の妹分にあたる小夜子が依頼者です。被害者がすべて若い男性。導入部なので大きな進展はありませんが、摩緒の経験と菜花の能力とを合わせて解決させるだろうと思います。

その他のメモ

菜花は現代の浅草の人力車を見たことがないのか?

妻が夫を「旦那さま」と呼ぶのに違和感を覚えます。

当時の浅草の街並みの記録映像を見つけました。大正12年に上空から撮影   三/三(youtube)です。

ARAI Satoshi ( arai@luminet.jp / the_arai@yahoo.co.jp)