迷惑の推量 20001217

…繰り返すのも飽きたなぁ(苦笑)。

まえがき

ネット上における迷惑の多くは不要な閲覧コストが強制されることにあると思う。閲覧コストは通信料金だけでなく閲覧自体の手間なども含むものだ。そして、その内容が不快なものであれば感じる迷惑の度合いは増大する。

その場のコモンセンスから外れる投稿について、これらの観点から考察してみよう。

不要な内容とは?

インターネットの特性上、電子メールや掲示板やチャットなどにおける他者の投稿の内容は、サーバーからトランスポート(要するにダウンロード)しなければ判明しない。しかし、コストを掛けてトランスポートした内容が、その場のコモンセンスに反するものなどであった場合には、そのコストは無駄に費やされてしまったことになる。

一般的に言えば、過度な脱線はそれに興味の無い人にとって、特定個人宛ての私信はその宛先以外の人にとって、指定外の形式はそれを解読できない者にとって、意味不明瞭な文章は多くの閲覧者にとって、不必要に巨大なサイズはほとんどの閲覧者にとって、いわゆる荒らしはほとんど全ての閲覧者にとって、不要なものである。

実際には、投稿や交流の活性化を意図して、ある程度までの脱線や私信を許容しているところが多い。

閲覧コスト

さて、閲覧コストの観点から考えると、電子メール(MLを含む)が最も高く、掲示板やチャットがそれに続く。モバイル端末ユーザーなどには一般的に、電子メール受信量に比例した通信料金が課せられる設定のものも少なくない。

そして、閲覧者の数(配信数や有効読者率や保存期間などに相関する値である)を併せて考えれば、大規模なMLやニュースグループなどこそが最も迷惑量が多くなり得るシステムである。

更に付け加えると、掲示板やチャットはその後に閲覧しなければさらなる迷惑を受けることは無いが、MLなどは登録解除などしなければならない。

対策の優先順位

こうして考えてみると、あるシステムにおける迷惑量というものは、

( 不要な内容の比率 × その不快さ × 述べ閲覧数 ) × 投稿数

このようなオーダーで推し量ることができるだろう。

迷惑量がより大きいものはより優先して対処がなされるべきである。大規模なMLやニュースグループで、管理者たちだけでなく一般投稿者たちがルールを繰り返すのは、まさにこういうことである。そして、閑古鳥が鳴いているチャットで管理者以外がルールを口にしないのも、そういうことである。

迷惑の予防

閲覧コスト強制による迷惑を予防する方法を提示する。

脱線を予防

その場のテーマが限定されていないフリートークを旨としているならばともかく、多くの掲示板やMLではテーマが限定されている(中傷や下ネタを禁止するのも然り)。テーマや脱線許容範囲は、システム運営者が決定している場合もあるし、コモンセンスとして確立している場合もある。

運営者によるテーマの明示は脱線を減らす上で有効である。また、参加者たちも明示されたテーマを指し示すことにより、脱線投稿者に対して注意をなすことができるだろう。蛇足ながら、テーマに関する面白い話題を提供し続けることによって、脱線を防ぐ方法もある。

私信を予防

多くの場合、私信は脱線的内容である。しかし、その場のテーマに則った投稿であっても私信は発生し得る。例えば、「その意見に対して私はこう思うよ > ○○さん」は特定個人に宛てた内容であるが、「○○さんの意見に対して私はこう思うよ」は不特定多数に宛てた内容である。逆に言えば、このように記述できない内容は投稿すべき内容ではないとも言える。

このルールの明示によって私信を減らせる効果があるばかりでなく、投稿に対するレスポンスあるいはリプライが誰にでも気軽にできるようになるだろう。

指定外の形式を予防

多くのMLではHTML形式を禁止している。これはメールを受信する環境によっては投稿内容を解読できないからである。

この問題は、メーラーの設定を自力で変更できない初心者によってもたらされることが多い。実際のところ、注意した上で設定変更の方法を示せば同じ人による再発は防げる。

初心者というものは常に発生するものだ。この問題を根絶させるには、メーラーの初期設定がテキスト形式になることが必要である。マイクロソフトに投書したり、初心者が初期設定がテキスト形式になっていないメーラーを使わないようアンチアウトルックキャンペーンを展開するのも(非常に僅かだが)有効かも(苦笑)。

巨大サイズを予防

一般にMLでは添付ファイルを禁止している。これは過大な転送コストを防ぐ目的である。

メールにファイルを添付できるだけの技術を持った者は、とても初心者とは言えない。すなわち注意を理解できるだけの技量があるということだ。遠慮無く注意すべし。

荒らしを予防

実際のところ予防は難しい。アクセス制限を掛けるだけの技術と度胸があることを示しておくことや、恨まれたり妬まれたりしないようにすることも、有効だろう。

不要部分の増加を予防

例えば、MLサーバ側で添付ファイルを除去し、そして自動的に注意メールを送付するのは、きっと効果的に違いない。HTML形式の投稿についても同様だ。

述べ閲覧数の増加を予防

無用な内容の投稿記事部分を削除することは、将来の述べ閲覧者の増加を防ぐという意味で有効である。

連鎖迷惑を予防

赤信号を横断したことを注意したら、ごめんなさいと謝りながら赤信号を渡って戻ってくる。このようなことを避けるために、ごめんなさい投稿は禁止すべきである。

迷惑の治療

閲覧コスト強制による迷惑を治療する方法は…どうしょうもないですな。投稿者を特定することができ、投稿者に責任とその能力があり、閲覧コストが金銭に換算できたならば損害賠償を請求することは可能だろう。もちろん、そのようなケースはまずありえない。

Satoshi ARAI ( arai@luminet.jp )