ルーミック愛好者論提言要約

ルーミック愛好者論シリーズとは、ルーミック愛好者論『基本論』に始まり同『一般愛好対象論』に完結される論文集です。シリーズを通じて「愛好対象は何か」を解析し、「真理と正義」を考察し、以下の3点に要約される提言を主張します。

自己の正義…愛好者は自分の愛好対象を認識すべきである

ルーミック愛好者の主たる愛好対象でもある高橋留美子作品とは、高橋留美子が漫画の形態をもって表現した著作物,著作権法上正当な権利を有する者による二次的著作物,又はこれらの複製物を意味する。実際には各愛好者毎に愛好対象は千差万別であるが,ほぼ全てのルーミック愛好者に共通した愛好対象として、作品,物品及び情報,仲間及び友人,居場所のうち有形のもの及び無形のもの,その他これらに対する愛好心等、が挙げられる。愛好心が愛好対象であるとは、単行本を買うにも関わらず読もうとしない者のような場合であり,ファン的愛好(好きなものが好き)及びマニア的愛好(好きなことが好き)、で考えれば後者の場合である。彼は表面上は否定するだろうが、所有しているという自己満足もまた重要な愛好対象となっているのである。たしかに,自分の愛好対象がどのような構成になっているかを認識することは苦痛を伴う。しかし,自己の愛好対象を認識することによって、その愛好対象の発生,存続,或は消滅に対してよりよい方策を講じることが可能となる。このことはほぼ全ての愛好者にとって有益である。したがって,愛好者は自分の愛好対象を認識すべきである。

自己の愛好対象を認識する方法の一例を挙げる。(1)それぞれの対象について愛好し始めた理由及び愛好し続ける理由,(2)各愛好対象が存在し続け及び生産され続ける為の条件,及び(3)愛好をやめた後に何が残るのか、の3点について考えるのである。(3)は、仲間及び友人について特に考えるのがよいだろう。

他者の正義…愛好者は他人の価値観を尊重すべきである

ルーミック愛好者の愛好活動には、雑誌に掲載されている作品を読む,単行本を読む,テレビ放映作品を観る,映画を観る,ビデオやLDを観る,レコードやCDを聴く,ポスターを部屋に貼る,キャラクターグッズを使う,友達と作品について話す,情報を集める,仲間を作る,イラストを描く,主題歌やBGMを演奏する,雑誌に投稿する,作品を論評する,コレクターとなる,フィギュアモデルを作る,コスチュームプレイをする,同人誌を作る,サークルを作る,パソコン通信で話す,お茶会を催す,イベントに徹夜する,声優の追っかけをやる,職業とする,その他の活動等、がある。熱心な愛好者は一般的な活動の他に2〜3の特殊な活動を行っている場合が多い。彼らのうちの多くは、愛好活動をも愛好対象にしてしまい、その活動にはまり込んでしまったのである。

作品のレベルでの愛好対象の違いだけでなく、愛好活動のレベルでの愛好対象の違いもまた、相互理解(互いに相手の価値観を尊重)が難しい。例えば,ある活動のエキスパート達は他の活動について誤解と偏見とに満ちた知識しか持っておらず互いに〔或は一方的に〕見下していたのである。不毛な争いを終了させる為に、愛好者は他人の価値観を尊重すべきである。

どのような活動系統であろうとも一般人から見れば「タヌキとムジナ」である。また,作品の供給には、いわゆる愛好者(愛好者のうち熱心な者)による需要ではなく一般人による需要が必要である。よって,一般人に対する発言力を確保する為にも、愛好者は他人の価値観を尊重すべきである。

社会の正義…愛好者は公序良俗に従うべきである

全ての個人は自由(いわゆる無制限の自由)及び責任(自由の結果としての責任)を持つ。個人のうち義務(一般意思(集団の全構成員の正義の総和)によって負わされた責任)を履行する者は、権利(一般意思によって認められた自由)を行使することが許される。つまり,集団(個人の集合体)に集団の社会規範(法,道徳,しきたり,風習,又は流行等)を破る〔或は守る〕と認識された者は集団による制裁(刑罰,又は批判等)〔或は保護〕を受けるのである。また,相矛盾する社会規範が存在する場合がある。例えば,いわゆるヤクザのしきたり(ヤクザ社会に於ける社会規範)のうちのいくつかは、公序良俗(一般社会に於ける社会規範)と相矛盾する。よって,一般社会の社会規範を破ってまで自分達だけの社会規範を守る者は一般社会から制裁を受ける。例えば,いわゆるオタク(社会のルールを破ってまで趣味のルールを守る者)が一般社会から白眼視されるのは当然である。ルーミック愛好者についても同様である。愛好者自身を守る為に、愛好者は公序良俗に従うべきである。

相矛盾する社会規範が衝突した場合には、それらのうちの強い方が維持される。また,愛好者の愛好する対象のうちのほとんどは公序良俗に反してまで存在することが難しい。よって,愛好する対象を守る為にも、愛好者は公序良俗に従うべきである。

Satoshi ARAI ( arai@luminet.jp )