現役ファン数Pを大雑把に表現すると、単位時間に発生する新規ファン数Sとファン継続期間Dとの積に相当する。例えば、毎月1000人が発生し平均寿命3ヶ月なら定常数は3000人となる。要するに現役ファン数Pを増大させたいならS又はDを増大させればよいのだ。
Sを増大させるには…これは昔から幾度と無く繰り返されてきた話題である…非ファンが作品に接する機会を創造することが重要である。結論を言えば新規ファンの開拓にしろ元ファンの掘り起こしにしろ、ミクロなレベルでは単行本やビデオの貸与などが有効であり、マクロなレベルでは再放送要望の投書などが有効である。行動こそ有効、願望だけでは効果はない。
一方、Dの増大の方はあまり論じられてこなかった。理屈の上では、3月坊主1人を10年戦士に育てれば、3月坊主39人を開拓したのと同じ効果を持つというのに!
この文書では、ファン継続期間Dの増大に焦点を当てる。
ファンはいつファンであることを辞めるのか?。以下の3パターンが考えられる。
継続期間Dの増大という観点では、より長いパターンへ遷移させるという方針と、各パターン内で終了条件を満たさせないようにするという方針とが見えてくる。この文書では「中期を長期へ転化させる」及び「中期の終了条件を満たさせない」について述べよう。これら2つ以外は、新規ファン数Sの増大で既に論じられているので割愛するか、あるいは論じる意味がもともと無いものである。
自分は一生涯ファンであり続けると私に向かって言ったものの数年後には姿を見せなくなった者のなんと多いことか。生涯のファンとなることはそう簡単なことではないのだよ。自分の人生に作品を組み込むと言うことはどれだけ重い意味を持っていることか!
長期パターンのファン達の共通項を考えるに、趣味に振りまわされること無く、趣味を人生の一部としてしっかりと管理していることがあげられよう。ベテランをよく観察して見たまえ。本当に趣味で人生を破滅させたなんてことは無いのだよ。みんなしっかりと社会の中で生きているじゃないか。
趣味に溺れることなかれ。この趣味を愛好していることを周囲にも容認させるぐらい立派な人となれ。
一般のファンがその愛好を辞める典型例は、就職や進学で生活環境が変化した場合、恋に恋する少女が熱病から覚めるように辞める場合、他の趣味や学校のクラブ活動に夢中になっていつしか作品を忘れていく場合、所属していた集団が機能停止又は消滅した場合などなどがあげられよう。
もちろん無理してまで愛好を続ける必要はないし、寂しいことだが作品への愛好意欲を感じなくなっても愛好活動を続ける必要もない。問題は、自分は愛好を続けたいのに環境がそれを阻害する場合でその阻害要因がファンたち側にある場合だ。その典型例が、所属していた集団…ファンとしての精神的な居場所…が機能不全となった場合だろう。
ファンたちが阻害要因を作らなくなることはファンの平均継続期間Dを増大せしめ、ひいては現役ファン総数Pを増大させるものである。
ファンとしての居場所が継続的に提供されることが重要だ。
十人の新規ファンを啓蒙しても一人のファンを引退させてしまったら帳消しになるかも知れない。新しく居場所を求めて来たファンを受け入れないような雰囲気を作ることは、果たしてどれだけ現役ファン数Pに影響を与えるものか。