ある日、出版社に勤務する友人より、ブックフェアで高橋留美子先生のサイン会が催されるという情報が入る。ずいぶんと久しぶりのサイン会だなと思いつつ消息筋に情報の裏を取る。パニックによる中止をいかにして回避するか?を考える。そして、「うる星メイリングリスト」に速報する。
そしてサイン会の前日。「ルミネット」の夜光ロゴ入りのアルミトランクを押入れから取り出し、イベント用の荷物&装備をチェックする。雨は降り止まず、風は強い。湾岸の風はもっと強いだろう。マントと赤い指揮棒を装備。消息筋から最新情報が入る。徹夜組あり、7時半開場などなど。来客と作戦や情報を確認。仮眠をとり3時に起床。右手に赤いヘアバンドを装着(十数年来の私のトレードマーク)して、有明ビックサイトに向けて進路を取る。
現地には朝4時過ぎに到着。雨は降りやまず、風は予想通りに強い。徹夜組は40人弱、知った顔も少なくない。徹夜組&早朝到着者の名簿を私が管理することになる。開場直前、人数増加、又はスタッフ到着のときには名簿順に列を作るので必ずいるようにと周知させる。みんな協力してくれた。雨風ゆえに少ないと予想していたのだが、サインコレクターたちも6〜7人ほどいたようだ。また、林原めぐみトークショー狙いの人達もいる。それにしても徹夜に慣れていない人が多いと思う。疲れている人にはマルチビタミン剤を差し上げる。ルーミックファンの自治意識を内外に示すためにも徹夜のノウハウを公開すべきだろうと考える。始発組も到着し人数も増えてきたので列を作る。
朝6時半にブックフェアのスタッフと警備員が到着したので彼らに管理状況を通知し後を引継いでもらう。7時頃に100人目(これも私の知人)が到着し、サイン会整理券の列は締め切りとなる。行列を眺めると私の知人は十数人ほどいるようだ。イベント仲間と話しながら開場を待つ。事前情報通り7時半に部分開場し、100人は東館通路で行列状態のまま待機。アルミトランクは私の椅子となる。ここでさまざまな人と知り合うことができた。ルーミック話に花が咲く。新たな出会いはいつでも楽しいものだ。9時15分にブックフェア入場券の販売&交換が開始される。そして10時に小学館スタッフによりサイン会整理券の配布が開始される。いつの間にか外は晴れている。
情報に拠れば14時5分前に高橋留美子先生はブース入り。犬夜叉の絵柄が印刷された色紙に、その場でサインと名前と日付を入れてくれるとのこと。あるサインコレクターは「自分の名前は入れてもらわないほうがいい。価値が下がる」と言っていた。彼にとってサインの価値は換金性にあるようだ。私の場合は、私が尊敬している高橋留美子先生が数十秒とはいえ私の為に時間を費やして下さったことを記念するものとしてのサインの価値がある。つまり、宛名入りの方が価値があると考えている。
10時半、チャット仲間ら(彼らは9時過ぎに有明に到着)に合流。昼食は海老穴子天丼(1000円)。その次にイベント仲間らと再合流し情報交換などなど。そして14時、小学館ブースで待望の高橋留美子サイン会が開始される。ブースを取り巻く観客は通路を埋める。開始の挨拶の後、サイン会が開始される。フラッシュの嵐だ。一人当たり30〜40秒ぐらいの時間配分だ。このペースでは終わるのは15時過ぎかも知れない。感激で涙を流す少女、事務的にサインを受け取る人、握手する手を離さない人、ファンさまざま。私はある計画があったので最後にサインを頂くことにした。ついでに、シリアルナンバー'100/100'を記入してもらう(本当は'99/99'なんだが…)。そして、記念写真など。
サイン会の後は、イベント仲間や知り合った人達と車2台に分乗し移動。虎ノ門のジョナサンで歓談。16時半、渋谷で個人的な用事を済ます。19時、ふと思うことあって渋谷のジョイタイムに向かう。ジョイタイムは10年以上前からイベントの打ち上げに我々が使用してきた店だ(特に代々木店)。ここのカニクリームコロッケは私の定番である。時代の変化とファンの動向について一人で考えようと思っていたのだが、入店してみるとこれまた別の知人らのグループが先客でいたりする。先ほどのサイン会の写真が現像されていたので見せてもらう。「この世界で新井さんを知らない人はモグリだよ」と言われるが…そんなに有名なのかなと苦笑する。それでも、カウンター席でカニコロッケをつまみながら思索にふける。私の長いファン生活の中でサインを入手する機会は何度かあったが、当時の私にとってそれは非常に難度の高かったことだった。今回のようにたかだか1泊徹夜や早朝参加するだけで入手できるほど簡単なことではなかったのだ。時代の変化を喜ぶと同時に寂しくも思う。20時に帰宅。