この語の構成は「ジャリ+テン」である。「テン」は固有名詞であるからして、問題は「ジャリ」の方だ。単純に考えると「砂利」のように踏むと音を立てる意味であるかのように思える。「じゃりんこ」も関係ありそうだ。少し調べてみよう。
現代(戦後)の用語で「ジャリ」といえば、映画館などで使用される「じゃり族」が思い当たる。この「じゃり族」は「じゃりんこ」の語源であり、「子供」という意味である。我々現代人の感覚では「うるさい」「邪魔な」というものがイメージされる。
それでは本来「じゃり」とはどういう意味なのだろうかを更に手繰ってみた。隠語辞典によれば「ジャリ」には、「だり」の派生語としての「女」という意味と、盗賊用語から俗語に変遷しての「子供」という意味(大正時代)と、淡路せんぽが使ってた「牛」という意味(明治時代)との3種類があるようだ。まちがいなく語源は「子供」の意味の「じゃり」だろう。
それでは盗賊用語として「じゃり」にはどんな意味があったのか?。隠語辞典では「小粒」の意味が派生して「子供」の意味を指したのではないかと推測している。なぜ、大正時代の盗賊たちは子供を「うるさいもの」ではなく「小粒」という意味で呼んでいたのだろう?
さらに調べてみると、明治時代の盗賊用語に「しゃり」「しゃりし」「じゃりん」というものがあった。これらはいずれも強盗という意味である。あくまで推測だが、大正時代の盗賊達にとって子供というのは「砂利のように煩い」ではなくむしろ「小さな強盗」のイメージがあったのではないだろうか?。もっとも、この推測が正しかったとしても時代の流れの中でやはり「砂利のようにうるさい」という意味が含まれてきたことは否定できないだろう。
諸星あたるはテンをしてジャリテンと呼んだが、そこにあったイメージのは果たして「砂利のうるささ」なのか「小さな強盗」なのか?。高橋留美子女史はこの言葉にどのようなイメージを持っていたのだろうか?
秋の夜長に思索にふけるのも面白かろう。