三浦%店長から「Eric S. Raymondの論文はファン活動に通じるものがありますね。どっちも趣味、同好、同士(世間)への無償の還元?がありますし」と私信があった。で、久しぶりに論文を読み返して相違点をまとめてみようとしたが、事はそう簡単なものでもなく、途中で止めた。
なお、その論文はソフトウェア開発コミュニティに関するものである。
「よいソフトはすべて、開発者の個人的な悩み解決から始まる」。
よいファン活動は全て、ファンの個人的な欲求から始まる。確かに、成功したファン活動の多くは、「〜がやりたいな」という個人的な欲求から始まったように思う。上映会や即売会なども実際にそうだったろう。
「何を書けばいいかわかってるのがよいプログラマ。なにを書き直せば(そして使い回せば)いいかわかってるのが、すごいプログラマ」。
何をやればいいかわかってるのがよいファン活動家。どうやればいいかわかってるのがすごいファン活動家。
「捨てることをあらかじめ予定しておけ。どうせいやでも捨てることになるんだから(フレッド・ブルックス『人月の神話』第11章)」。
実現できないことをあらかじめ予定しておけ。どうせいやでも実現できないことになるんだから。なにもかもを実現することは難しいだろう。いくつかの企画やアイデアは次回に持ち越すつもりでいればいい。
「まともな行動をとってれば、おもしろい問題のほうからこっちを見つけだしてくれる」。
まともなファン活動をやってれば、おもしろい企画のほうからこっちを見つけだしてくれる。適切なコミュニケート手段を維持していれば、誰かが面白い企画を言い出したことを見逃さないということだ。
「あるソフトに興味をなくしたら、最後の仕事としてそれを有能な後継者に引き渡すこと」。
あるファン活動に興味をなくしたら、最後の仕事としてそれを有能な後継者に引き渡すこと。サークルなどの代表者は特に肝に銘じておくべし。
「ユーザを共同開発者として扱うのは、コードの高速改良と効率よいデバッグのいちばん楽ちんな方法」。
参加者を共同企画者として扱うのは、企画の高速改良と効率よい実行のいちばん楽ちんな方法。いつも私が言うように、百人の一般参加者を集めるよりも百人のスタッフを集める方が簡単だ。
「はやめのリリース、ひんぱんなリリース。そして顧客の話をきくこと」。
はやめのリリース、ひんぱんなリリース。そして参加者の話をきくこと。バザール的な運営には、コミュニケーションが非常に重要である。
「ベータテスタと共同開発者の基盤さえ十分大きければ、ほとんどすべての問題はすぐに見つけだされて、その直し方もだれかにはすぐわかるはず」。
オブザーバと共同企画者の基盤さえ十分大きければ、ほとんどすべての問題はすぐに見つけだされて、その直し方も誰かにはすぐわかるはず。三人寄れば文殊の知恵と言うではないか。
「賢いデータ構造と間抜けなコードのほうが、その逆よりずっとまし」。
賢い役割分担と間抜けな執行者のほうが、その逆よりずっとまし。確かに、その通りだ(笑)。今回の相違点列挙における、私にとって新しい観点である。三浦%店長に感謝。
「ベータテスタをすごく大事な資源であるかのように扱えば、向こうも実際に大事な資源となることで報いてくれる」。
オブザーバをすごく大事な資源であるかのように扱えば、向こうも実際に大事な資源となることで報いてくれる。彼らだって「何か手伝いたい」と思っているのだ。指導者は彼らに期待する役割を明確にしなければならない(さもなくば彼らも手伝いようが無いだろう!)。
「いいアイデアを思いつく次善の策は、ユーザからのいいアイデアを認識することである。時にはどっちが次善かわからなかったりする」。
いいアイデアを思いつく次善の策は、参加者からのいいアイデアを認識することである。時にはどっちが次善かわからなかったりする。
「自分の問題のとらえかたがそもそも間違っていたと認識することで、もっとも衝撃的で革新的な解決策が生まれることはよくある」。
自分の問題のとらえかたがそもそも間違っていたと認識することで、もっとも衝撃的で革新的な解決策が生まれることはよくある。もちろん、この新井さとしの意見が間違っていることだってあるだろう。盲目的に信じないように(笑)。
「『完成』(デザイン上の)とは、付け加えるものが何もなくなったときではなく、むしろなにも取り去るものがなくなったとき」。
「完成」(企画書の)とは、付け加えるものが何もなくなったときではなく、むしろなにも取り去るものがなくなったとき。企画書はシンプルに、計画書は詳細に。
「ツールはすべて期待通りの役にたたなきゃダメだが、すごいツールはまったく予想もしなかったような役にもたってしまう」。
企画はすべて期待通りの役にたたなきゃダメだが、すごい企画はまったく予想もしなかったような役にもたってしまう。
「ゲートウェイソフトを書くときはいかなる場合でも、データストリームへの干渉は最低限におさえるように必死で努力すること。そして受け手がわがどうしてもと言わない限り、絶対に情報を捨てないこと!」。
活動記録を書くときはいかなる場合でも、素材への干渉は最低限におさえるように必死で努力すること。そして受け手側がどうしてもと言わない限り、絶対に情報を捨てないこと!。
「自分の言語がチューリング的完成からほど遠い場合には、構文上の甘さを許すといろいろ楽になるかもね」。
自分の言語がチューリング的完成からほど遠い場合には、構文上の甘さを許すといろいろ楽になるかもね。
「セキュリティシステムのセキュリティは、そこで使われてる秘密の安全性にかかっている。見かけだけの秘密は要注意」。
セキュリティシステムのセキュリティは、そこで使われてる秘密の安全性にかかっている。見かけだけの秘密は要注意。これは、ファン活動の場合にはあまりあてはまらないようだ。
「おもしろい問題を解決するには、まず自分にとっておもしろい問題を見つけることから始めよう」。
おもしろい企画を実現するには、まず自分にとっておもしろい企画を見つけることから始めよう。
「開発コーディネーターが、最低でもインターネットくらい使えるメディアを持っていて、圧力なしに先導するやりかたを知っている場合には、頭数は一つよりは多いほうが絶対にいい」。
指導者が、最低でもインターネットくらい使えるメディアを持っていて、圧力なしに先導するやりかたを知っている場合には、頭数は一つよりは多いほうが絶対にいい。