コミュニケートの裏表 20001105

誤解と偏見の一例

無いということを証明するのは難しい

世の中は広く、人々は多い。そして、人々がコミュニケーションを取り始めると、いつしか数多くのコミュニケートコロニーが形成されていく。

さてここで、あるコロニーAにおいて他のコロニーBのことが話題になったとしよう。コロニーBのメンバーの何人か(恐らくはほとんど)はコロニーAに所属していないので、彼らにとってコロニーAのコミュニケート状況は見えない。

「見えない」とはどういうことかというと、「Bに関する話題がなされていること」を知ることができないのと同様に、「Bに関する話題がなされていないこと」を知ることができないということだ。

表裏一体の相対性

逆に、コロニーBにおいてコロニーAのことが話題になることもある。その場合、コロニーAのメンバーの何人かにとって、コロニーBのコミュニケート状況は見えないものであり、彼らには「BにおけるAに関する話題の有無や内容」を知ることが出来ない。まさに裏表とは相対的なものなのだ。

さらに、コロニーCやDなども併せて考えてみると、本当にややこしくなる。

軍縮の相互査察

複数のコロニーが存在する状況において、ひとたび疑惑が発生すると、疑心暗鬼はエスカレートする。これはゲーム理論で簡単に表わされる構図の一つである。そしてそれは、火の無いところに煙を発生させるケースもありえるし、ささいな火種が大火災に発展するケースもありえる。

いうなれば、軍縮の相互査察の問題だ。もし根本的な解決法を思いつけば、私はノーベル平和賞を手にすることができるだろう(笑)。もちろん、世の中に唯一の国しか存在しないようにするための予防戦争という解決法もないわけではないが…(苦笑)。

根本的な解決方法が存在しなくとも、ある程度は誤解を予防あるいは解消することができるのは、歴史が証明していることである。人類はその努力を怠るべきではない。

ネットにあてはめてみる

この構造は、インターネットのチャットやICQ(あるいは特定メンバ間の秘話機能)などに当てはめることができる。

ネットに顔を出さないこと,リードオンリー状態にいること,ICQ使用を公表すること,秘話機能付きのチャットにいること、ピーピング数を表示するチャットを覗いていること、などなどは、「裏で話している」という誤解や偏見を生み出しやすくする。過去ログが残らないチャットにいることや、ログ編集権限が多用されることも同様だ。

もちろん、これらの行為には必然性やメリットがある。不参加やリードオンリー(チャットの覗きを含む)は忙しい社会人やテスト前の学生にとって必要なことであるし、ICQや秘話機能は個人間のコミュニケートを手軽に取るのに有用だ。過去ログを閲覧できないチャットは自由な発言を催すだろうし、ログ編集は荒らし対策などに必要だ。

たいていの場合、これらのメリットはデメリットに比べてはるかに大きいので、これらの行為をやめる必要はない。

ついでに、「理解の発生」についても言及しておこう。これは、本当に「(裏で)話している」場合である。話している当人たちが、それが「裏で話している」と解釈されていることに気づくことはほとんどあるまい。

実際には、現場に入って話をするのはなかなか難しいものだ。話そうとしている人が、その対象の過去ログや秘話ログを閲覧することが出来なければなおさらだ。私が、チャットの過去ログ閲覧機能(1時間程度で十分)の設置を推奨しているのも、チャットへの入りやすさを増やすことが誤解や偏見の発生を減らすと考えてるからだ。