著作権論4『ガイドライン構想』

高橋留美子作品ファンサイトにおける著作物利用について、
自主ガイドラインの制定と公認ガイドラインの可能性を論じます。

ガイドライン・Level1ガイドライン・Level2

更新履歴

目次

まえがき

『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』及び『犬夜叉』等はマンガ家・高橋留美子による著作物であり、それらは主に小学館によって出版されている。これらの著作物は総称してルーミック作品と呼ばれており、数多くのファンが存在している。

この文書では、愛好活動における著作物使用の法的問題について述べ、ファン活動における現実的な著作物使用の自主的ガイドラインとその運用を提案し、将来の公認ガイドライン化の展望を記す。

小学館が「画像使用・著作権について」を公開

さて、小学館の単行本などにおいては「本書の一部あるいは全部を無断で複製・転載・上演・放送等をすることは、法律で認められた場合を除き、著作者及び出版者の権利の侵害となります」と明記されている(高橋留美子の『犬夜叉』単行本14巻初版第1刷より)。

しかるに、2000年1月に小学館が示した「(インターネット又はイントラネットにおける)画像使用・著作権について」では「法律で認められた場合を除き」の意味の文章が含まれていない。小学館の見解は、法律で定められる基準よりも明らかに狭いものであり、憲法の定める「表現の自由」を侵害する可能性すらある。

無知あるいは無基準ゆえの過剰な著作権侵害

ファン達の愛好活動において著作物使用はしばしば必要とされる。しかし、著作権者らの許諾を得るべき場合が多いにも関わらず、ファンたちがその許諾を得ることは無かった。そして現実を見れば、同人誌、フィギュアモデル、又はWWWサイトなどにおいて法的根拠の無い著作物使用は数多くなされている(第49条)。それらのほとんどが著作権者らに知られてないか或いは黙認されているのが現状だ。

「どこまでならば黙認されるであろうか」や「どうなったら犯罪として扱われるのか」などの論議はその違法性ゆえにタブーとされてきた。確信犯の場合は別として、実際に無知あるいは無基準ゆえの過剰な著作権侵害が発生しているにも関わらずだ。ある種のリスク管理の欠如とも言えよう。

WWWの普及によりファン活動における著作物使用の形態が変容してきた今こそ、そのタブーを打ち破り現実的なガイドラインを論じるべきではなかろうか?。

高速道路の法定速度の例え話

ところで、この問題は高速道路の法定速度の問題と構造がよく似ている。そこで、以下の状況を仮定してみた。

このような状況の場合、どの速度を採用すべきだろうか?。もし法定速度を決定できるならどのようにすべきだろうか?、もし警察の立場ならどのように運用すべきだろうか?。色々と考えてみると面白いだろう。

ちなみに、実際の高速道路の法定速度は時速100km又は時速80kmである。

自主ガイドラインの存在意義

ところで現実に著作権法を厳格に適用すると、ファン活動の多くが法的根拠の無い著作物使用の状態となる。トラブルを起こさないようにする為の方針として、著作物使用を控えるか、著作者の許諾を得るなど法的根拠を得るか、著作権者らに知られないようにするか、著作権者らに黙認されるか、の4パターンが有り得るだろう。

著作物使用を控える方針は事実上、ファン活動を不必要に萎縮するものであり現実的ではない。著作物使用の法的根拠を得る方針は多くの場合に理想的なものではあるが、いくつかのファン活動においては致命的なものである。著作権者らによる許諾を得ることが事実上不可能であるので、例えば、違法性を持たずにファンフィクションを公開することが事実上できなくなるのだ。著作権者らに知られないようにする地下化は、私のポリシーに反するので私はそれに反対する。また、それは根本的に何も解決しない。そこで、ファン活動の地下化を防ぐ目的もあり、著作物使用の実態を著作権者らに知られてなお黙認されるであろう基準について考えていきたい。

自主ガイドラインは、著作権者側が個々のファンとの交渉を拒絶している現状において有用な方策だと考える。例えば、WWWサイトの為にガイドラインバナーをつくり、各サイトが自分のサイトの著作物使用レベルを表示するようにしてはどうだろうか?。同人誌などでも同様のガイドラインマークを掲載することができるだろう。自主ガイドラインは免罪符ではないが、無知あるいは無基準ゆえの過剰な著作権侵害を防止する効果がある。

第1章 著作物使用の状態とその基準

著作権法の観点からは、ファンの愛好活動(WWWサイトや同人誌などに限らない)における著作物使用には、

の5種類の状態がある。それぞれの基準を考察してみよう。

合法であり、著作権者らの私見にも反しないもの

著作権者らによる基準が、法的な基準よりも狭量な場合である。一般に、大手出版社などによる基準は、法的な基準と同等かあるいはより狭量な場合が多い。

法律で認められた著作物使用にまで制限を掛けることは権利の濫用であり、当然に無効である。それでも著作権者側が、このことを承知した上で著作権侵害を予防する為にあえて厳しい見解を表明するのはそれなりに有効な手法ではある。なぜならば、ファンの多くは「法律で認められた場合」について無知かあるいは誤解しているからだ。小学館の「(インターネット又はイントラネットにおける)画像使用・著作権について」はこのケースであろうと推察される。この場合、法律で認められた場合に基づいて著作物使用を行っているファンに対して著作権者側が法的手段に訴えることはまずないだろう。

なお、著作者らの私見に反しないからと言って、必ずしも著作物使用許諾を得ることができるとは限らない。なぜならば、著作権者らにとっては単に黙認状態に留めておいた方がデメリットが少ないからである。

合法であるが、著作権者らの私見に反するもの

「法律で認められた場合」に対しても小学館が「それは権利侵害だから止めて欲しい」と儀礼的に通知してくることは有り得ないことではない。その場合、ファン側は「〜の規定に基づいて使用している」と根拠を示す必要がある。その為にファンたちは、法律がどのような場合にどのような条件で著作物使用を認めているのかを把握しておくべきである。もし把握していなければ、不必要にファン活動を自粛してしまうかもしれないからだ。

違法であるが、著作権者らに知られていないもの

「著作権者らがその著作権侵害を知った上で黙認しているのか」それとも「著作権者らがその著作権侵害の存在を知らないだけなのか」を区別をするのはファンにとって非常に難しいことである。

また、黙認していた場合でもいざトラブルとなったときに、著作権者側が「知らなかった」と主張することは十分にありえる。なぜならば、著作権侵害が存在していたことを知りながら放置していた責任が著作権者側に発生するからだ。

違法であるが、著作権者らに黙認されているもの

著作権法の規定による使用や許諾を得た使用などは「法律で認められた場合」に相当するが、それ以外での著作物使用は違法行為になる。それでも、著作権法は基本的に親告罪だから著作権者が黙認している間は問題にはならない。

実際に黙認のケースは非常に多いだろうと思われる。なぜならば、同人誌やWWWサイトなどのケースのファン活動の多くは、著作権者らにとって実害がないどころかグローバルな観点ではファンを増やす上で有効であるからだ。恐らく、それらのファン活動は著作権者らに歓迎すらされているだろうと思われる。また、事務処理の観点でも、許諾の審査や公平性の保持などに掛かる手間はバカにすることができない。そして、許諾を得たファン活動も時と場合によては許諾取消の対象となりえ、その際には莫大な手間が掛かるかもしれないし、ファンに与える印象も悪くなるだろう。

違法であり、著作権者らから通告あるいは提訴などされたもの

このようなファン活動も無いわけではない。刑法の犯罪構成用件を満たす形式で著作物使用を行う場合や、著作権者らに不利益をもたらす形式での著作物使用の場合などが、これにあたる。また、黙認するのが心情的に耐えられないと著作権者らが判断した場合も、これにあたるだろう。

例えば、刑法175条に抵触するファンフィクションや、海賊版の出版、公序良俗に反するファンアート、営利目的の同人誌販売、などが上げられる。

第2章 法定ガイドライン

まずは、ファン活動においてルーミック作品を、複写、上映及び演奏、放送及び有線送信等、口述、展示、上映及び頒布、貸与、並びに、翻訳及び翻案等などするにあたり「法律で認められた場合」とは具体的にどのようなものかをまとめてみた(「おまけ・法定ガイドライン詳細」参照)。更にファン活動においてしばしば行われる著作物利用について「ガイドライン・Level1」としてまとめてみた。

「ガイドライン・Level1」

この「ガイドライン・Level1」は、一般的なファン活動においてルーミック作品を、複写、展示、上映、頒布、貸与、及び、翻案等などするにあたっての「法律で認められた場合」の具体的基準を、簡易に記述したものである。なお、著作権法以外の法律等において不法行為となるものは、著作権者の許諾の有無に関わらず基準外である。将来の法改正などにより、「ガイドライン・Level1」と法律とが矛盾した場合は「ガイドライン・Level1」側が自動的に修正される。

私的使用のための複製、翻訳、編曲、変形、又は翻案等

著作権者の許諾を得なくとも、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において私的利用するために、ルーミック作品を複製したり模写したり翻訳したりイラスト化したりファン小説を書いたりすることができる。但し、デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製(ダビング)する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要とされているし、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときは著作権者の許諾が必要とされる。

なお、上記の私的使用において作成された複製物又は二次的著作物(の複製物)を、頒布又はそれを公衆に提示した場合には著作者の複製権、又は、翻訳、編曲、変形、若しくは翻案権を侵害したとみなされる。ちなみに、商業雑誌等におけるイラスト掲載などは別段の法的手続きに基づいているので、心配することなく投稿しても大丈夫だ。

引用のための複製、翻訳、又は変形等

著作権者の許諾を得なくとも、報道、批評、研究その他の目的の為に引用を行うことが出来る。引用にあたり、昭和55年3月28日 「パロディー事件」における最高裁の判例によれば「他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなど自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)、及び、出所の明示がなされていること」とされている。

複製による引用の場合、あるいは、複製以外の利用でも出所明示の慣行がある場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。

営利を目的としない上映等

著作権者の許諾を得なくとも、営利を目的とせず、且つ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず著作物の提供又は提示につき受ける対価)を受けない場合には、ルーミック作品を公に上映することができ、放送されるルーミック作品を他人と一緒に視聴することができ、又は、ビデオなど映画等を除くルーミック作品(単行本など)を貸し出すことができる。上映等においてルーミック作品を利用するにあたり出所明示の慣行がある場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。ちなみに、コンベンションなどで音楽の著作物をBGMとして使用する場合などには注意が必要である。

原作品の所有者による展示とそれに伴う複製

著作権者の許諾を得なくとも、生原稿やセル画など美術品の原作品の所有者等はその実物を公に展示することができる。さらに、解説又は案内の為のパンフレット等に展示品を掲載することができる。この掲載の為に著作物を複製する場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。

ファンによる独自の著作物

ファンによる独自の作品(小説など)の一部にいわゆるルーミックネタとしてルーミック作品を使用する場合には、その該当部分については原著作者の著作人格権が成立する(つまり、元ネタがルーミックであるということに変わり無い)ものの、全体としてはそのファンの著作物となる。もちろん、そのような著作物については、そのファンに著作権等が成立する。

非営利目的

しばしば「非営利なら構わない」あるいは「非営利目的なら構わない」という意見をファン活動において見かける。しかしながら、著作権法において非営利なら構わないのは、営利を目的としない上演等の場合(第38条)等であり、その他の著作物使用には必ずしも適用されるものではない。つまり、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で行う著作物使用は営利目的であっても構わないのだ。ゆえに、同人誌即売会等が家庭内に準じる場所であると認められたならばそこでは営利目的でも構わないことになる。そもそも、家庭内に準ずる場所として認めることに無理があるのだが、その論議もまたタブーのひとつとなっているようだ。

二次的著作物の公開

二次著作物とは原著作物に対する用語で「著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案したもので、思想や感情などの独創性があるもの」をいう。いわゆるパロディマンガやファン小説などのファンフィクションやキャライラストなどのファンアートは二次的著作物である。但し、独創的が認められない作品(模写や複写など)は二次的著作物ということはできない。

一般のファンが二次的著作物を著作するだけならば、許諾を得ること無しに「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用する場合」によってのみ自由に行うことができる。

同様に、二次的著作物を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」で公開することももちろん自由に行うことができる。しかし、二次的著作物を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」以外の場所で公開するには、教科書に掲載する場合(33条)、学校教育番組の放送かその教材の場合(第34条)、授業の過程で使用する場合(第35条)、著作権者から著作物の利用について許諾を受けた場合(第63条)、著作権の譲渡を受けた場合(第61条)、又は、文化庁長官の裁定を受けた場合(第67条)に因らなければならず、事実上不可能である。

同人誌即売会などが「同人誌即売会は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内である」と建前として確信犯的に主張するのも上記の理由による。著作権者らもまた、同人誌即売会の存在あるいはその主張をあえて無視あるいは黙認している。フィギュアモデル等を主に扱うワンフェスやジャフコンなどは一日権利者のシステムを採用している。それらのコンベンションは家庭内に準じる場所ではないとした上で二次的著作物利用の許諾を得ている。

二次的著作物を個人間でやりとりする場合にも「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」に限定される。あまり大規模にやると無視あるいは黙認を得られにくくなるだろう。

ところで、平成10年1月1日施行で著作権法に加わった「送信可能化」の定義により、インターネットやイントラネットに著作物を置くだけで、実際の利用とは関係なく公開とみなされるようになった。すなわち、インターネットやイントラネットは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」とみなすことはできなくなったのだ。つまり、著作権者からの許諾を得ずして二次的著作物をWWWサイトで広く公開することは事実上不可能となったのだ。但し、メーリングリストやパスワード式の掲示板などでの著作物使用についてはそれが私的利用にあたるか否かはケースバイケースであると思われる。

もし著作権者の許諾を得ないで広く二次的著作物を公開したならば、それは複製物の目的外使用等(第49条)として、著作者の翻訳、編曲、変形、又は翻案権を侵害したとみなされる。

独自の著作物

まず、ファンワーク(イラストや小説やマンガなど)のうち、原作の絵などの単なる模写は「原著作物の複製」にあたる。

ファンワークのほとんど(イラストのほぼ全てとマンガや小説のほとんど)は、ルーミック作品のキャラクターを「主」としているので「二次的著作物」に含まれると解釈すべきだろう。

実際のファンワークにおいて「新たな著作物」となるものは少ないようだ。もしファンワークが、例えばファンの独自創作のキャラクター&ストーリーであり、それにルーミックキャラなどを「従」として利用するならば「新たな著作物」だとみなすことが出来るのではないだろうか。

ルーミック作品などを全く利用しないファンワークは、…それをファンワークの範疇に含めるか否かは別にして…それは立派な「創作著作物」である。もちろん、自由に公開できる。

現実のファンワーク(イラストや小説やマンガ)のほとんどは、原著作物のキャラクターを「主」としており「二次的著作物」に含まれると解釈すべきだろう。もしこれがファンの独自創作のキャラクター&ストーリーであり、それにルーミックネタを「従」として利用する程度ならば「新たな著作物」とみなすことが出来るだろう。

ところで、ファン独自の創作による「新たな著作物」だが、場合によっては原作のイメージから大きく離れることになる。例えば、高橋留美子は『うる星』の武藏三部作(単行本13巻)で小説「宮本武藏」等を利用したと思われるが、その利用は原作(つまり小説)のイメージから大きく外れたものだ。小説「宮本武藏」のファンからは「イメージを大きく崩す利用はやめて欲しい」という声があがっているかも知れない。るーみっくファンがルーミック作品を「従」として利用した場合にも、同好のファンからこのような声が発生するかも知れない。

ちなみに、いわゆるエロパロやヤオイなどの中にも稀に「新たな著作物」に該当するものが有り得ることを付記しておく。想像は創作の要因であり、妄想は想像の一種である。

著作権法以外の法令…いわゆる猥褻物の場合

ルーミック作品のキャラクターは性的魅力も多分に持っているので、それに対する愛好は当然ながら有り得る話だ。著作権法の観点とはいささかずれるが、それについて簡単に述べておく。

刑法175条

刑法175条が「猥褻の文書、図画其他の物を頒布若くは販売し又は公然之を陳列したる者は二年以下の懲役又は五千円(現在はもっと高額)以下の罰金若くは科料に処す。販売の目的を以て之を所持したる者亦同じ」と定めている。もしファンフィクションやファンアートが猥褻物にあたるならば、それらの頒布者及び販売者は犯罪を犯したことになる。猥褻物の所持については、単に個人の趣味として持っている分には犯罪とはされない。

文書の場合について判例を基に考察すると、猥褻であるとされる為には「性器または性的行為の露骨かつ詳細な具体的描写叙述」と「描画叙述が情緒、感覚あるいは官能に訴える方法でなされている」という2つの外的事実の存在が最小限度必要であるほか、文書自体の支配的効果が好色的興味に訴えるものと評価され、その時代の社会通念上、普通人の性欲を著しく刺激興奮させ、性的羞恥心を害するものであることを要する。

なお、この条文における頒布などの定義は著作権法の場合と異なっている。「頒布」とは、不特定多数又は多数人に対し無償で交付することをいう。「販売」とは、不特定又は多数人に対し有償で譲渡することをいう。いずれも目的物が現実に引き渡されたことが必要である。そして、「公然陳列」とは、不特定又は多数人の観覧しうる状態におくことをいう。ちなみに、WWWサイトに掲載することは、条理的に考えるとやはり「公然陳列」にあたると思われる。

18禁規定や青少年保護育成条例

「性器や性行為の描写が露骨でなければいい」とか「頒布若くは販売し又は公然陳列で無ければ構わない」という意見も見られるが、必ずしもそうではない。例え刑法175条にあたらなくとも、いわゆる18禁規定や青少年保護育成条例などがあるので、注意が必要だ。

海外の法令

同人誌の通販などで猥褻物を輸出したり、あるいは、WWWにおいて海外のサーバー上に猥褻物を置く場合などは、当該国の法令がどのようになっているかあらかじめ調べておいた方がいいだろう。日本のファンの感覚ではどうということのない描写であっても、諸外国では必ずしもそのように解釈されるとは限らないからだ。

著作権法以外の法令…税金

一般のファン活動程度では関わることはないだろう。

第3章 公定ガイドライン

公定ガイドラインとは、著作権者らがあらかじめ許諾した著作物利用基準である。小学館の示した「画像使用・著作権について」などもこれに含まれる。また、ファンの自主的なガイドラインが公認された場合には、この公定ガイドラインに相当するものとなる。

小学館の示した「画像使用・著作権について」

論議に必要なのでここに引用しておく。

----引用開始----( http://skygarden.shogakukan.co.jp/sol/sol2k/main/picture.html )

小学館はインターネット及びイントラネット上において、当社の出版物を以下の行為に使用することを禁止しております。

以上の行為は営利非営利の目的いかんに関わらず著作権等の権利侵害となります。

守っていただけない方には法的手段を講じることもありますので、ご注意ください。

----引用終了----( 2000年02月22日現在 )

追記。2003年06月05日現在も掲載されている。

その後の経緯

消息筋によれば、少年サンデー編集部の見解は「小学館ホームページの『画像使用・著作権について』は、ごく一部に存在する悪質な(例えば小学館のキャラクターを扱ったあまりに不快感を与える内容や誹謗中傷、差別的表現などを含む)ホームページ等に警告を発する意味で掲載されたものであり、ごく普通のファン活動であるところの同人誌やホームページを規制しようという意図はありません」とのことらしい。

2月下旬。声優さん達が小学館を訴えた模様。詳細不明。

高橋留美子先生の見解は?

ところで、かなり昔に高橋留美子先生が「(同人誌については)事前に送られてきたものについては、キャラがひどい扱いを受けてない限り、それも愛ということで認めます」という意味のことを非公式に発言したという記憶があるのだが…。現在、膨大な資料の中から調査中である。

第4章 自主ガイドライン

法定ガイドラインに「上映等における必要経費の徴収」及び「公開可能な二次的著作物の具体的条件」等を付加したものを、「ガイドライン・Level2」として提案する。これは、あくまで自主ガイドラインのサンプルあるいは叩き台にすぎない。実際の自主ガイドラインの制定にあたっては様々なファンによる多くの議論が必要だろう。

また、高橋留美子先生の発言などをもとに、想定される状況の中でも最も許容範囲が広いものを「ガイドライン・Level3」として例示しておく。

「ガイドライン・Level2」

この「ガイドライン・Level2」は、一般的なファン活動(同人誌やWWWサイトに限らない)においてルーミック作品を、複写、展示、上映、頒布、貸与、及び、翻案等などするにあたっての著作権侵害を黙認してもらうための具体的基準を、簡易に提案したものである。なお、公序良俗に反するもの、または、著作権法以外の法律等において不法行為となるものは、著作権者の許諾の有無に関わらず基準外である。

私的使用のための複製、翻訳、編曲、変形、又は翻案等

著作権者の許諾を得なくとも、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において私的利用するために、ルーミック作品を複製したり模写したり翻訳したりイラスト化したりファン小説を書いたりすることができる。但し、デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製(ダビング)する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要とされているし、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときは著作権者の許諾が必要とされる。

私的利用によって著作された二次的著作物(及びその複写物)が、「著作権法以外の法令に反するものではないこと」「原著作物のイメージを甚だしく崩すものでないこと」及び「原著作物の出所明示を行うこと」である場合に限り、「営利を目的としないこと」、「適切な手段をもって原著作権者にその二次的著作物の存在を報告すること」、及び、「その公開の対象はもっぱら同好のファンであること」の条件をもって、その二次的著作物(及びその複写物)を、「コンベンションなどファンが集う場所で頒布又はそれを公衆に提示」、「二次的著作物の案内や解説を目的とした小冊子に掲載」、若しくは、「ファン活動を目的としたWWWサイト又はメーリングリストに掲載」することができる。

引用のための複製、翻訳、又は変形等

著作権者の許諾を得なくとも、報道、批評、研究その他の目的の為に引用を行うことが出来る。引用にあたり、昭和55年3月28日「パロディー事件」における最高裁の判例によれば「他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなど自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)、及び、出所の明示がなされていること」とされている。

複製による引用の場合、あるいは、複製以外の利用でも出所明示の慣行がある場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。

営利を目的としない上映等

著作権者の許諾を得なくとも、営利を目的とせず、且つ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず著作物の提供又は提示につき受ける対価)を受けない場合には、ルーミック作品を公に上映することができ、放送されるルーミック作品を他人と一緒に視聴することができ、又は、ビデオなど映画等を除くルーミック作品(単行本など)を貸し出すことができる。上映等においてルーミック作品を利用するにあたり出所明示の慣行がある場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。ちなみに、コンベンションなどで音楽の著作物をBGMとして使用する場合などには注意が必要である。

ファン活動を目的としての上映であり、かつ、あらかじめ上映の概要を著作権者に通知している場合に限り、最低必要限の会場借用費の回収を行うことができる。観衆1人あたりから受け取れる額の上限は、最低必要限の会場借用費を、会場の最大収容人数の半分で割った金額とする。結果的に黒字でも赤字でも構わないが、いずれにせよ参加人数と会計結果を著作権者に報告しなければならない。

原作品の所有者による展示とそれに伴う複製

著作権者の許諾を得なくとも、生原稿やセル画など美術品の原作品の所有者等はその実物を公に展示することができる。さらに、解説又は案内の為のパンフレット等に展示品を掲載することができる。この掲載の為に著作物を複製する場合には、その著作物の出所を合理的と認められる方法及び程度によって明示しなければならない。

ファンによる独自の著作物

ファンによる独自の作品(小説など)の一部にいわゆるルーミックネタとしてルーミック作品を使用する場合には、その該当部分については原著作者の著作人格権が成立する(つまり、元ネタがルーミックであるということに変わり無い)ものの、全体としてはそのファンの著作物となる。もちろん、そのような著作物については、そのファンに著作権等が成立する。

利用の場の限定と営利目的の禁止

同人誌即売会が「即売会は個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内であるので、二次的著作物の利用に違法性はない」と主張することがあるが、これは結果的に「即売会は個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内であるので、営利目的でも構わない」を付随させてしまう。しかし、黙認する側は二次的著作物利用は黙認しても営利目的は黙認したくはないだろう。そもそも、家庭内に準じる場とすること自体に無理がある。

「ガイドライン・Level2」では、即売会などを家庭内に準じる場と無理にみなすことはしない。もっと直接的に、二次的著作物利用を認めてもらう為に、その利用の場を限定し、かつ、営利目的を禁止することを提案する。

上映会等における必要経費回収

さて、著作権者から許諾を得ることなしに、ファンが全く違法性を持たずに著作物を大規模に上映するには「営利を目的としない上演等(第38条)」によるしかない。ところが実際のところ、若いファンらが上映会を開催するにあたり会場使用料等の金銭的負担は少なくないので、一般参加者らから料金を徴収せざるを得ない。この料金を「営利を目的としない上演等(第38条)」にいわゆる「いずれの名義をもってするかを問わず著作物の提供又は提示につき受ける対価」とみなされてしまうことを恐れている(上映権の侵害にあたる)。

「ガイドライン・Level2」では、上映会等における必要経費回収を認めてもらう為にその条件を明文化することを提案する。ビデオが普及した現在、上映会が著作権者らの利益を侵害するとは考えにくいことも、いくらかファンに有利になると思われる。

今後の検討課題等

公開されるコスプレに、自主ガイドラインは設けるべきか?

著作物の売買に関する自主ガイドラインに効果はあるのだろうか?

「ガイドライン・Level3」

この「ガイドライン・Level3」は想定される状況の中で最も許容範囲が広いものを例示するものである。

総則

ファン活動におけるルーミック作品の利用はその表現を行う媒体に関わらず、「キャラクターがひどい扱いを受けてないこと」、「著作権者への報告がなされること」、「著作者及び出版者の利益を侵害するものではないこと」、及び「著作権侵害以外について不法行為とならないこと」の条件を守る限り自由に行うことができる。

第5章 自主ガイドラインの制定と運用

著作物利用ガイドラインに関する考え方には大きく分けて2通りあると思う。1つが法定ガイドラインで、もう1つが自主ガイドラインだ。

まず、法定ガイドラインとは「法律で認められた場合」つまり「著作権法などで認められた場合、又は、著作権者が事前に許諾した利用の場合」における著作物利用の具体的基準である。この法定ガイドラインには更に3つの設計方針があり「(出版者らが多用する)できるだけ著作権者らに有利な解釈を採用した法定ガイドラインA」「(法学者らの興味のあるところの)一般的な法解釈をもって作る法定ガイドラインB」及び「(ファンが自分たちの正当性を主張する為に利用するところの)できるだけファン側に有利な法解釈を採用した法定ガイドラインC」とがある。法定ガイドラインについては過去に多くの議論がなされてきた。実際にWWWで検索を掛ければ、様々な法解釈や判例を発見できるだろうし、様々なファンの言い分(又は言い訳)も見つけることが出来るだろう。

一方、自主ガイドラインはその思想が根本的に法定ガイドラインと異なっている。それは「著作権法は親告罪だから、いかにして黙認される状態を実現するか?」に基づいたものである。いうなれば、典型的な確信犯だ。高速道路の走行速度や闇米購入のルールに相当する。自主ガイドラインに関する論議はそれほど多くない。それは、自主ガイドラインを制定する者は「どの程度までなら黙認され得るか」というある種の禁忌とも言える論議を最終的にしなければならないからだ。

自主ガイドラインの制定

議論を進めるにあたっては3段階のフェイズがあると思う。

変な言い方だが、自主ガイドライン制定においては「法定ガイドラインC」について必要以上に論議する意味はない。下手に「これはこういう解釈だから大丈夫」なんて論じずに「ダメなものはダメ、OKなものはOK」とバッサリ論じた方が、より現実的な自主ガイドラインができるだろう。

自主ガイドラインの運用

自主ガイドラインが完成したら、その運用規定と共に広く公開する。

しかし、自主ガイドラインは強制力を持たない。基本的に自己申請システムを採用することになるだろう。もし、自主ガイドラインを管理する団体が発足できたならば、ある種の登録制が可能になるかも知れないが…。WWWサイトにおいては自主ガイドラインバナーが、同人誌においては自主ガイドラインマークが、それぞれ掲載されるだろう。

公認ガイドラインへの展望

最終的には、ファンによって制定された自主ガイドラインを著作権者らに許諾してもらい公認ガイドラインにしようと考えている。確かに、自主ガイドラインは現段階ではある種の必要悪とも言えるものだ。しかし、それが公認ガイドラインとして許諾された場合には、ファン達は胸を張ってファン活動を行うことができるようになるだろうし、著作権者らの事務的労力を大幅に減少させるものである。従って、著作権者らに認めてもらうためにも自主ガイドラインをデファクトスタンダード化するだけの意義は十分にあると思う。

もしファン活動における著作物使用について現実的な自治管理システムが存在すれば、著作物使用許諾などを得やすくなるかも知れない。例えば、ファンによる委員会に管理の委任がなされる可能性もある。その場合に備えて、委員会の運営ルールも作成しておくべきだろう。委員会の具体的な活動としては、使用料支払いの手続き代行などがある。交渉も可能になるだろう。例えば、使用料支払いの代わりに小学館の宣伝バナー掲載をもって代えることなどだ。

おまけ 法定ガイドライン詳細

ファン活動における著作物使用についてまとめてみた。これを要約したものが「ガイドライン・Level1」である。

二次的著作物とは?

二次著作物とは原著作物に対する用語で「著作物を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化・その他翻案したもので、思想や感情などの独創性があるもの」をいう。いわゆるパロディマンガやファン小説などのファンフィクションやキャライラストなどのファンアートはそのほとんどが二次的著作物にあたる。但し、独創的が認められない作品(模写や複写など)は二次的著作物ということはできない。

著作権法に則って二次的著作物を著作するには、家庭内(及びそれに準ずる場所)で使用する場合(30条)教科書に掲載する場合(33条)学校教育番組の放送かその教材の場合(第34条)授業の過程で使用する場合(第35条)著作権者から著作物の利用について許諾を受けた場合(第63条)著作権の譲渡を受けた場合(第61条)、若しくは、文化庁長官の裁定を受けた場合(第67条)、又は、プログラムの著作物においては自ら電子計算機で利用する場合、に因らなければならない。

一般のファンが二次的著作物を著作するだけならば、許諾を得ること無しに家庭内(及びそれに準ずる場所)で使用する場合(30条)によって自由に行うことができる。二次的著作物を家庭内(及びそれに準ずる場所)で公開することももちろん自由に行うことができる。しかし、二次的著作物をそれ以外で公開するには、教科書に掲載する場合(33条)学校教育番組の放送かその教材の場合(第34条)授業の過程で使用する場合(第35条)著作権者から著作物の利用について許諾を受けた場合(第63条)著作権の譲渡を受けた場合(第61条)、又は、文化庁長官の裁定を受けた場合(第67条)、に因らなければならない。

出所の明示(第48条)

どのような利用形態であれ、第48条は以下の各場合に「著作物の出所を、その複製又は利用の形態に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない」としている。

引用(第32条)教科用図書等への掲載(第33条)点字による複製等(第37条)裁判手続等における複製(第42条)、及び、美術の著作物等の展示に伴う複製(第47条)複製する場合。

学校教育番組の放送等(第34条)時事問題に関する論説の転載等(第39条)政治上の演説等の利用(第40条)利用(複写を含む)する場合。

並びに、引用(第32条、複製以外の利用)教育機関における複製(第35条)試験問題としての複製(第36条)営利を目的としない上演等(第38条)時事の事件の報道のための利用(第41条)、及び公開の美術の著作物等の利用(第46条)出所明示の慣行がある上で利用する場合。

複製物の目的外使用等(第49条)

著作者の複製権を侵害したとみなされるのは、私的使用のための複製(第30条)図書館等における複製(第31条)教育機関における複製(第35条)点字による複製等(第37条)時事の事件の報道のための利用(第41条)裁判手続等における複製(第42条)、及び、放送事業者等による一時的固定(第44条)において作成された複製物を、頒布又はそれを公衆に提示した場合等である。

著作者の翻訳、編曲、変形、又は翻案権を侵害したとみなされるのは、私的使用のための複製(第30条)図書館等における複製(第31条)教育機関における複製(第35条)点字による複製等(第37条)時事の事件の報道のための利用(第41条)、及び、裁判手続等における複製(第42条)の目的の為に、翻訳、編曲、変形、又は翻案して作成された二次的著作物の複製物を、頒布又はそれを公衆に提示した場合等である。

なお、著作者のその他の権利に関しては、それぞれの場合について参照のこと。

著作者人格権との関係(第50条)

第50条は、著作者の著作権が制限される場合について「著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない」と定めている。ルーミック作品の原著作者は高橋留美子であることに変化は無いのだ。

私的使用のための複製(第30条)

私的利用とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを言う。著作権者の許諾を得なくとも、私的利用のために著作物を、複製、翻訳、編曲、変形、又は翻案等することができる(要するに、個人レベルでなら自由にルーミック作品を複写したり模写したりイラストを描いたりファン小説を書いたりできるということだ)。デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製(ダビング)する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要である。なお、公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときは著作権者の許諾が必要となる。

なお、この条項は著作物の複製品などを広く公開することを認めたものではない。公開については別の条項によらなければならない。ちなみに、アニメ雑誌などにおけるイラスト掲載などは法的手続きに基づいているので、心配することなく投稿しても大丈夫だろう。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動において非常に頻繁に行われていると推定される。

図書館等における複製(第31条)

国会図書館などを利用するファンは一定の条件の下に、ルーミック作品のコピーサービスを受けることができる。場合によっては、ルーミック作品の翻訳を受けることもできる(日本のファンにとってはあまり意味は無いが…)。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動において稀に見られる。

引用(第32条)

報道、批評、研究その他の目的のファン活動において、「公正な慣行に合致すること」及び「引用の目的上、正当な範囲内で行われること」等を条件とし、ファンの著作物にルーミック作品を引用して利用することができる。その際に、翻訳を行うことも出来る。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動において頻繁に見られるものである。

教科用図書等への掲載(第33条)

学校教育の目的上必要と認められる限度で、教科書にルーミック作品を掲載することができる(笑)。ただし、著作者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要である。掲載においては、翻訳、編曲、変形、又は翻案することもできる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

学校教育番組の放送等(第34条)

学校教育の目的上必要と認められる限度で、学校教育番組においてルーミック作品をを放送することができる。また、学校教育番組用の教材にルーミック作品を掲載することもできる。ただし、いずれも著作者への通知と著作権者への補償金の支払いが必要である。放送あるいは掲載において、翻訳、編曲、変形、又は翻案することもできる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

教育機関における複製(第35条)

教師の職にあるファンは、著作権者に経済的不利益を与えるおそれがある場合を除き、授業の過程で使用するためにルーミック作品を複製することができる。その際に、翻訳、編曲、変形、又は翻案することもできる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。もし学校教育に携わるファンがいたならば、この条項に基づいてルーミック作品のファンアートやファンフィクションなどを作成してもいいだろう。

試験問題としての複製(第36条)

ファンは、入学試験や採用試験などの問題としてルーミック作品を複製できる。その際に翻訳を行うこともできる。ただし、営利目的の模擬試験などの場合は、著作権者への補償金の支払いが必要である。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。ファン活動として営利目的でない「ルーミック模試」を企画した場合にこの条項を適用できるか否かは興味深い問題である。

点字による複製等(第37条)

ファンはルーミック作品を点字によって複製することができる。また、点字図書館や盲学校の図書室など一定の施設では、もっぱら盲人向けの貸出し用として著作物を録音することができる。複製や録音において、翻訳することもできる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。但し、点字や録音物の発展としての音声ブラウザー対応WWWコンテンツの法律上の扱いが、今後どのようになるか注目していきたいと思う。

営利を目的としない上演等(第38条)

営利を目的とせず、且つ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には以下のことができる。なお、料金とはどんな名目であるかに関わらない

ルーミック作品を、公に上演し、演奏し、口述し、又は上映することができる。ただし、出演者などに報酬が支払われる場合はこの限りではない。放送されるルーミック作品を他人と一緒に視聴することができる。ビデオなど映画を除くルーミック作品(単行本やCDなど)を貸し出すことができる。

この条項による著作物使用は、小規模なものに限定すれば、一般のファン活動において非常に頻繁に見られるものである。

時事問題に関する論説の転載等(第39条)

ルーミック作品は基本的に、時事問題に関する論説ではない。

政治上の演説等の利用(第40条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

時事の事件の報道のための利用(第41条)

ルーミック作品に関する時事の事件を報道するために、その著作物を利用する場合、又は事件の過程においてルーミック作品が見られ、若しくは聞かれる場合にはそのルーミック作品を利用できる。その際に、翻訳することもできる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。WWWサイトなどでの情報提供が報道にあたるか否かは興味深いが、恐らく無理だろう。

裁判手続等における複製(第42条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

放送事業者等による一時的固定(第44条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

美術の著作物等の原作品の所有者による展示(第45条)

原画やセル画の所有者等はその実物を公に展示することができる。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動において稀にみられる。

公開の美術の著作物等の利用(第46条)

ルーミック作品は基本的に、屋外展示物ではない。

美術の著作物等の展示に伴う複製(第47条)

原画やセル画の所有者がその実物を展示する場合に、解説又は案内の為のパンフレット等に展示品を掲載することができる。WWWページの形式で展示会パンフレットを公開した場合の法的解釈については大いに興味がある。

この条項による著作物使用は、一般のファン活動において稀にみられる。

プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(第47条の2)

ルーミック作品は基本的に、プログラムではない。

著作権者から著作物の利用について許諾を受ける(第63条)

著作権者から著作物の利用について許諾を受けた場合に、ファンはルーミック作品を利用することができる。この許諾は口頭であっても差し支えないが、後から問題が生じないように、できるだけ利用の態様を詳しく説明したうえ、文書で、その利用の仕方、許諾の範囲、使用料の額と支払い方法などを確認しておくのが望ましい。

…しかし、これができりゃファンたちは苦労しない。著作権に関して一般のファンから高橋留美子先生へのアクセスは、著作権を管理する小学館プロダクションなどを通じて行われる。「勝手な真似をされると裁判にしますよ!!」とか「版権使用料ですが、もし先生が1億とか言われたらあなた払いますか?」とか言われるかも知れない(実話)。それでも、ファンが著作物使用許諾を得た実例はいくつか存在する(^-^);。

出版権の設定を受ける(第79条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

著作権の譲渡を受ける(第61条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

文化庁長官の裁定を受ける…著作権者不明等の場合(第67条)

ルーミック作品の利用において、著作権者の居所が不明で交渉ができない場合などに、文化庁長官の裁定を受け所定の補償金を供託して著作物を利用することができる。

小学館プロダクションや編集部の壁により高橋留美子先生にアクセスできない場合に、この条項による著作物使用を検討してみてはどうだろうか?。このやり方が権利の濫用にあたるのか否かについて非常に興味がある。

文化庁長官の裁定を受ける…放送及び商業用レコード製作の場合(第68条、第69条)

この条項による著作物使用は、一般のファン活動においてはほとんどない。

あとがき

ファン活動のうち同人誌やWWWサイトなどでは、法定ガイドラインの範囲を超えた確信犯的なあるいは無知な著作権侵害が数多く為されてきた。ファンたちが法的な罪悪感を持たずに著作物利用するには著作権者らによる許諾あるいは公定ガイドラインか必要なのだが、それらが出される可能性は非常に低い。なぜならば、著作権者らにとっては黙認状態の方が有利だからだ。

しかし、ファン側はそれでは不安である。いつなんどき法的手段に訴えられるか分からないからだ。そこで、公定ガイドラインに相当する公認ガイドラインを目指すことを提案した。その為には、デファクトスタンダードとなりえる共用の自主ガイドラインの制定が有効だ。自主ガイドラインは免罪符ではないが、無知又は無基準ゆえの過剰な著作権侵害を防止する効果と、特定のファンが狙い打ちになりにくくなる効果もある。

この文書は「いかに著作権者らに認めてもらうか」の観点で書かれている。よって、著作物の範囲をルーミック作品に限定しているし、ファン側の活動の種類(WWWサイトや同人誌など)はあえて限定せず一般的なものとした。

音楽におけるJASRACのような、マンガやアニメの著作物利用の窓口となる機関の設立を待つという方法ももちろんある。しかし、私はこの機会を奇貨としてファン代表と高橋留美子先生とのパイプを作れないものかとその可能性も密かに検討している。

なお、私はこの文書でファンたちの活動の全てが著作権法で許された場合に相当しているとは言ってないこと及び法的根拠のない著作物使用を推奨しているわけでもないし糾弾しているわけでもないことを強調しておく。ついでに言えば、自分一人だけで自主ガイドラインを制定しようとまでは思っていない。制定のためには、多くの協力者が必要なのだ(この私とて法律については素人なのだ)。嵐の通りすぎるのを待つだけの人の為にまでお節介を焼くつもりもない。

Satoshi ARAI ( arai@luminet.jp )